漢方薬|漢方の特徴

三和生薬株式会社

漢方の特徴 POINT

漢方薬とは

薬草を使った薬は漢方薬・民間薬・家伝薬などに分類されます。

漢方薬とはイメージ

漢方薬とは、含まれる成分(構成生薬(しょうやく))は中国の古典を基本にして複数の生薬(しょうやく)を組み合わせ決まった処方となっていて、古医書(こいしょ)に使用目標が定められており、漢方医学的な診断に基づいて使われ用法・用量も決まっています。また、医療用と一般用があり医療用は148処方のみ保険が認められ医師の処方せんに基づいて処方されますが、一般用は200処方程度が薬局・薬店などで購入できます。
民間薬とは、通常、単一の薬用植物や生薬(しょうやく)を、古くから伝承された方法や、効果があった個人の経験などで用いられ、あまり細かい規定はありません。

家伝薬(かでんやく)とは、○○家の薬などのように伝承に基づき複数の生薬(しょうやく)を配合したもので、患者の使用目標にはこだわりませんが、決まった量で特定の症状に対して用いられます。
また、生薬製剤(しょうやくせいざい)と呼ばれるものもあり、こちらは生薬(しょうやく)を組み合わせた構成なので、漢方薬と非常に似ていますが、根拠を持って決められている漢方薬の処方内容や使用量とは多少内容が違っていたり、西洋薬が配合されたりしています。

西洋薬との違い

漢方薬は、通常二つ以上の天然の生薬(しょうやく)を組み合わせて配合された、いわば『複合薬』なのでその処方の中には多くの成分が含まれます。それ故一つの処方で色々な症状に対応出来ます。また、複数を組合せることで薬効の増強や副作用の緩和が図られています。これが、漢方薬は副作用が少なくその効き方は体が本来持っている自然治癒力を高め、バランスを整えることで治すと言われるゆえんです。
一方、西洋薬(新薬)は、単一の成分を抜き出し化学合成により人工的に作られているので、部分的に強い薬効が期待できる半面、単一成分による薬理作用が強く出過ぎる場合もあります。

漢方薬の診断の仕方

漢方薬の診断の仕方イメージ

漢方医学は、西洋医学のように病名を診断するのではなく、本人の自覚症状や体力や体質などにより虚(きょ)、実(じつ)、陰(いん)、陽(よう)といった「証(しょう)」を判定し、その「証(しょう)」にあった処方を使用します。「証(しょう)」とは漢方独自の用語で、病人が示す様々な状態(=特徴)のことを言います。つまり同じ症状でも、違う体質の人には違う漢方薬が処方される可能性があります。
実証(じっしょう)とは、体力的に充実していて、栄養状態が良く、肌つやも良い人で、抵抗力(闘病反応)が強い状態です。虚証(きょしょう)とは、体力的に虚弱で、栄養状態が悪く、体型はいわゆる水太りか痩せ型の下垂体質で、肌につやがなく、食べ過ぎると胃もたれを起こしやすい人で、抵抗力(闘病反応)が弱い状態です。陽証(ようしょう)とは、症状が活動的で、外部に表れやすく、脈が速く、熱が高く、のどが渇くような状態の場合です。陰証(いんしょう)とは、症状が静的で、内部に隠れて表れにくく、なんとなく元気がなく、脈も遅く、熱も高くない一見すると症状が軽いように見える状態です。

また、「証(しょう)」を判定するのには色々な見方があり、その一つに「四診(ししん)」があります。それは「望診(ぼうしん)」「聞診(ぶんしん)」「問診(もんしん)」「切診(せっしん)」の四種類の診察法です。
望診(ぼうしん)とは、肉眼で観察する方法で、体格や体型、顔色や肌のつやを診るほかに、「舌診(ぜっしん)」という、舌の色、舌の形、舌苔を診る診断方法が、望診(ぼうしん)では重要視されます。聞診(ぶんしん)とは、聴覚と嗅覚を使って診断する方法で、患者さんの声や咳、呼吸、腹の音の状態を聞いたり、口臭や体臭などにより判断する診断方法です。
問診(もんしん)とは、一般的に言う問診と同じで、患者さんに病状を聞く診断方法で、体質など一見すると病状と関係のないようなところまで詳しく聞き判断します。
切診(せっしん)とは、脈の速さや強さを診る「脈診(みゃくしん)」や、腹部を手で触って硬さやはりを診る「腹診(ふくしん)」などがあります。

それ以外にも、「気血水(きけつすい)理論」といって、生体は「気」「血」「水」という3つの要素の体内循環であるとする概念などがあります。これらすべてから総合的にその人の「証(しょう)」を判断します。
漢方薬では「証(しょう)」に合った処方薬を飲むことが何より大切です。

漢方薬の上手な使い方

漢方薬は上記のように、局所から全身にかけて働きかけ、自然治癒力を高めることによって薬効を発揮します。従って漢方薬は冷え症などの慢性的な体質の改善が期待できます。
漢方薬には「未病(みびょう)」という考え方があり、検査をしても原因がわからないが、「病気というほどではないが、健康ではない」「疲労倦怠感が長く続いている」など、自覚症状はあるのに原因がわからない症状に対しての治療に効果的です。

逆に急性疾患や現代医療の適応の症状には漢方薬は向いていないと言えます。
しかし近年には術後の体力の回復に漢方薬が使用されるケースが多くあり、両者を上手く併用することが増えてきました。その時々の症状に合わせて、漢方薬と西洋薬を上手く使い分けて使用していただけたらと考えます。
ただし、西洋薬と漢方薬を併用する場合には自己判断せずに、専門医、薬局・薬店にご相談ください。

漢方によく使われる用語の紹介

生薬(しょうやく)
自然界にある植物・動物・鉱物などのうち、その一部あるいは全部を乾燥など簡単に加工して、薬に用いるもの。
漢方製剤(かんぽうせいざい)
漢方における伝統的な煎剤・丸薬・散剤などのほか、エキス製剤も含めて漢方処方に基づく製剤の総称。
生薬製剤(しょうやくせいざい)
漢方医学の考え方によらず、生薬(しょうやく)単味あるいは複数生薬を配合して製剤としたもの。
気血水(きけつすい)理論
人のからだには「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素があり、それら3つの要素が過不足なく存在し、スムーズに巡っていることで、各臓器や器官は正常に機能することができるという考え方。
未病(みびょう)
やがて病気になる半健康的な状態、病気に罹(かか)り二次的疾患が発病する前の状態などを指す。
傷寒論(しょうかんろん)
伝統中国医学の古典。伝染性の病気に対する治療法が中心。
神農(しんのう)
古代中国の伝説に登場する皇帝。農業と薬において甚大な貢献をしたため、中国では“神農大帝”と尊称されていて、医薬と農業を司る神とされている。